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伊豆半島におけるモミ林の分布帯

この記事は、社会人を経験したのち自然を学ぶため大学に入りなおしたわたしが研究室のゼミで発表したレジュメである。

わたしに日本の自然史を学ぶ場を与えてくれた故沖津進教授にこの記事を捧げる。

目次

要旨

 伊豆半島におけるモミ林の分布は標高約300m~800mに及ぶ.気候と林分の種組成により暖温帯域モミ林とされているが,高標高域のモミ林は冷温帯林であるブナ林と接している.伊豆半島におけるモミ林の分布を水平分布および垂直分布により考察した.伊豆半島の約北緯34°50′の地理的位置における中間帯に相当する標高は約600-900m付近となった.伊豆半島の最標高地点は天城山(万三郎岳,1405m)であり,伊豆半島のモミ林は中間帯と暖温帯域にモミ林が分布していることがわかった.

はじめに

 伊豆半島は本州の中部にあって,相模湾と駿河湾を東西に分け太平洋に突出し,黒潮の影響を直接受ける.そのため,気候は温暖で雨量に恵まれ,特に冬期の気温が高く,夏は涼しいという海洋性気候である.伊豆半島北部中央には狩野川が北流し,その流域は達磨山・猫越峠(980m)・天城山系を連ねたU字型の分水界に囲まれる.天城山系は,東南西の三方面を海洋に面して黒潮の影響を強く受けるため,気候は温和で一般に湿度が高く,年間降水量も3000mmを超える.気温は年平均7-15℃を示すが,高所は冬期において西北西の風が強く,降雪もみられ積雪も珍しくない.そのため標高900m以上で太平洋型ブナ林が分布している.天城山の上部を除けば伊豆の森林はシイ類,カシ類およびタブが主体の常緑広葉樹林である.ブナ林と常緑広葉樹林の両帯にまたがり,モミ林が300~800mの標高域で分布している.特に両帯の中間部に帯状をなし一つの植物帯を形成し,モミ帯と呼ばれることもある.そこでこのモミ帯をブナ帯と常緑広葉樹林帯とは独立した森林帯ととらえるか,あるいはどちらかの森林帯にまたは両者の森林帯に含まれるかと考えるかが議論が分かれている点である.本ゼミでは伊豆半島におけるモミ林の分布を水平分布および垂直分布により考察した.

モミ林の分布

 鈴木(1951)は標高約600~900m以下の山地をモミ林が占めブナ林に接していることを報告している.天城山系でブナが生育している気候条件は,暖かさの指数が60.7,寒さ指数が-13.7と冷温帯域である(表1※).天城山上部を除けばシイ・カシ類が生育する暖温帯域である.宮脇ら(1977)は標高380m~660mにおいて,暖温帯域のモミ林群落を示すモミ-シキミ群集を報告している.梶(1975)は暖温帯,中間帯,冷温帯の主な構成樹種の水平分布と各地で報告されたモミ林の垂直分布帯の報告を参考にして,太平洋側の中間帯を緯度と標高の関係において図示した(図1※).図1をみると,緯度が高くなるに従って温度が低下し,暖温帯の上限と冷温帯の下限が温度の低下に伴い下がり,この両帯にはさまれた中間帯にあたる部分もこれに平行して下がることがわかる.また,北緯38度付近で暖温帯に相当する部分は終わり,北緯39度付近でブナが平地に下りてきてモミがみられなくなる.伊豆半島において現在モミ林が主に分布する地帯は約北緯34°50′近辺である.ここで,約34°50′の地理的位置における中間帯に相当する部分を図1から読みとると,標高にして,約580mから890mの範囲に中間帯が相当する部分が生ずることがわかる.この図の妥当性を暖かさの指数と寒さの指数に基づいて梶(1975)は検討しており,中間帯の下限は房総半島清澄山においてほぼ一致した.このことから伊豆半島における中間帯の下限標高値580mも妥当な数値であると考えられる.巡検地の現存植生図に記載されているモミ林は暖温帯域に含まれるシキミ-モミ群集とある.しかし,以上のことから巡検地のモミ林が中間帯と暖温帯とにそれぞれ分布していることが推察された.

※図表は下記引用文献(1次資料)を参照のこと※

引用文献

  • 鈴木時夫・蜂屋欣二(1951) 伊豆半島の森林植生 東京大学農学部演習林報告37:115-134.
  • 島野光司・沖津進(1994) 関東周辺におけるブナ自然林の更新 日生態会誌44:283-291.
  • 梶幹男(1975) 房総半島におけるモミ林の生態的位置に関する研究 東京大学農学部演習林報告 68:1-23.

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