ウルシは触るとかぶれる毒の木だが、にっぽんでは縄文時代から利用されている。
現在ウルシはにっぽん列島の隅々まで生育しているが、中国原産の木である。
揚子江中流域の標高800~2000m付近に野生のウルシが生えている。
日本のウルシは、農家の廻りや林道の縁など人間くさい場所にしか生えていない。
韓国のウルシも栽培されているもので、野生のウルシはない。
日本の植物相を扱った多くの著書は、ウルシは日本自生の植物ではなく、中国、インドあるいはその近隣地域に自生し、古くに日本に伝わったとしている。
葉緑体DNA解析結果をおこなったウルシ属の近縁5種の間で中国産、日本産、韓国産のウルシはすべて一つの系統群となったことから、これらすべてを同一種にする現在の分類学的な扱いは妥当であるといえる。ウルシ種内には調べた範囲で3つのハプロタイプが認められた。
日本には日本、韓国、遼寧省、山東省のウルシに認められた単一のハプロタイプしかないことは、日本のウルシが大陸起源だとしても大陸からの渡来は1~少数回で、日本国内でその子孫が広まったことによる結果といえる。
2014 国立歴史民俗博物館研究報告 第187集P66
縄文時代の遺跡から、ウルシ製品がたくさん出土している。
有名な遺物は福井県鳥浜貝塚の櫛(くし)や、北海道函館市で出土した9000年前の装身具である。
製品ではなく木材になると、さらに古い年代からウルシが確認されている。
福井県鳥浜貝塚から出土したウルシ木材は、放射性炭素年代測定を行ったところ約1万2600年前という結果が得られている。
1万2600年前というと、旧石器時代が終わり縄文時代が始まる初期の段階(縄文時代草創期)である。
もともと日本列島にウルシが生えていたといえる植物学的根拠がなく、また縄文時代草創期にウルシとウルシ文化が大陸から渡ってきたといえるほどの考古学的根拠も現段階では乏しい。
しかし、縄文時代草創期までに「ウルシの木」「ウルシを採る技術」「ウルシを利用する文化」が3点セットで日本列島にやってきた、というのが有力な説である。
日本では今から約1万2000年前の縄文時代草創期から、漆器をつくる塗料となるウルシの木材がみつかっている。
そしておもに東北地方を中心に、縄文時代前期以降の住居跡や住居周辺から炭化や生のウルシ属の果実がみつかっている。
ウルシの果実からは油脂燃料となる蝋成分が取れるため、縄文の化石果実がウルシだとしたら樹液以外に果実も利用した可能性が考えられる。
2014国立歴史民俗博物館「ここまでわかった!縄文人の植物利用」 P159
※参考リンク集※
コメント