電気をめぐり今起きていることを知ってほしい。これを読むと電気代の仕組み、再エネが難しい理由、ゲームチェンジャーについて知ることができます。
私たちの生活に直結!電気代をめぐる課題
電気事業をめぐる話題では「発電」ばかりクローズアップされるが、電気事業をめぐるトピックのうち重要なのは電気を送る「電力網」である。
電気は生モノであるため、需要に応じ発電されバランスが保たれている。
電力網にかかわる重要なトピックは2020年4月に既存電力会社の電力網を担う送配電部門が法的に分離されたことに始まる。これは今まで電力会社により独占されていた電力網が開放されたことを意味している。
これにより多様な発電事業者が既存電力網へ接続可能となった。
しかし、電力網の維持は莫大なコストがかかり、その費用は電気代に跳ね返る。
さらに燃料高騰により電気代は上がっている。
一方で日本の電力消費のうち70%を企業・事業所が占めているが、産業界の電気代は使えば使うほど安くなる仕組みだ。
再エネと電力網が抱える課題、再エネが普及しない理由
脱炭素社会を実装していくうえで再生可能エネルギー(以下、再エネ)が担う役割は大きい。
しかし再エネが主力電源化する道のりは険しい。
発電された電気は既存の電力網から需要家に届けられる。
しかし再エネによる発電は自然由来のため出力が不安定である。
2018年に北海道で起きた大規模停電は現地の風力発電機が電力網から一斉に切り離されたことも原因のひとつと言われている。
そのため不安定な発電に耐えられる電力網および調整機能が必要となる。
各電力会社は既存の電力網に多様な出自の電気を接続可能にする「系統強化」に着手している。
しかし系統強化にはコストも時間もかかるため、再エネの普及を進める複数の道を政府や事業者は模索している。
模索されている道のひとつ、たとえば電力網をムダなく使う「ノンファーム型接続」などの取り組みも始まっている。
ビッグ・テックと電力問題
再エネと電力問題にビッグ・テックは大きな影響を与えている。
節電が叫ばれた今夏、日本の電力消費のうち70%を企業・事業所が占めている。
今後さらに電力需要が拡がると考えられている産業分野は情報通信業界である。
不安定な国際情勢に呼応し、国内にデータセンターを建設する動きも高まっている。
それに加えビッグ・テックが電源選択を再エネとすることを続々と発表している。
たとえばAmazonのクラウド事業部(AWS)は当初目標の2030年から5年早い2025年までに、全世界の事業を 100% 再エネでまかなうと宣言した。
Amazonは日本でも着実に太陽光発電事業や大型洋上風力発電事業をバックアップしている。
テスラによるゲームチェンジ
テスラはただのEVメーカーではない。電力網のゲームチェンジャーである。
今から5年前、テスラはハワイのカウアイ島全体の電気を太陽光発電と巨大な蓄電設備によって、数時間だが再エネ100%を実現した。
カウアイ島は地の利により実現可能だったといえるが、日本の電力網の脆弱性をまかなうヒントになりそうだ。
災害大国の日本では蓄電池の可能性は防災という側面でも大きい。
系統増強によるコスト増の負担を電気料金として一般世帯がかぶる前にマイクログリッド(エネルギー自給自足)の可能性をテスラというゲームチェンジャーはどう見ているのか。
実は東電PGはフィリピンのマイクログリッドに投資している。
より良い未来のために人口減少時代の電力問題を考える
『シン・ニホン』(NewsPicksパブリッシング2020/2/20)にて安宅和人氏が述べた言葉「残すに値する未来」を提案したい。
日本は人口減少時代に突入して久しい。
これまでのやり方では確実に電力網は維持できない。
なぜなら電力網の維持には莫大なコストと人員が必要であり、単位面積あたりの人口が減ると経済的に維持できない仕組みになっているからだ。
2050年までに現在居住区の6割以上で人口が半分以下になる。
そのときに幸福な生活を送るために具体的なアプローチのキーワードは地域エネルギー取引プラットフォーム、大規模蓄電プラント運営、エネルギー業界のブロックチェーンなどだろうか。
おわりに
日本が今抱えているテーマについて「電力」という切り口で書いた。現代の私達は電気無しでは生きていくことが困難である。一般家庭の電力供給は既存の電力会社に頼るのではなく地産地消のマイクログリッドに期待したい。この記事をきっかけにどうやって現代の日本が維持されているのか興味をもち、調べることにより今後どんな日本になってほしいのか、みんなと一緒に考えたい。
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