カルデラとは大規模な噴火によって地面が陥没した直径2㎞以上の穴である。カルデラ火山の周期は多くが1万年以上と長い。日本には観光名所となっているカルデラが各地にある。
とくに九州と北東北から北海道にかけては第四紀後期(約260万年前以降)の中でも比較的新しい大型カルデラ火山が集中している(北から屈斜路,支笏,洞爺,十和田,阿蘇,姶良,阿多,鬼界)。
前野 深「カルデラとは何か : 鬼界大噴火を例に」科学 84 (1), 58-63, 2014-01
本記事では日本各地にあるカルデラを概観する。
目次
北海道・東北・北関東のカルデラ
下図のオレンジ色のポリゴンは火山が原因の地形を示し、水色の円はカルデラを示す。カルデラの詳細は下表にまとめた。
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ID | 名称 | 都道府県 | 所在地 | 備考 |
1 | 屈斜路 (くっしゃろ) | 北海道 | 川上郡弟子屈町 | 約3万年前に噴火活動の後、火山が円形に陥没するという激しい地殻変動を起こした。 |
2 | 阿寒 | 北海道 | 釧路市 | 約15万年~20万年前の激しい火山活動で3回の大規模火砕流が噴出し,形成した。その後,2万年前~5万年前頃に雌阿寒岳が噴火を開始。 |
3 | 倶多楽 (くったら) | 北海道 | 白老郡白老町 | 約8~4.5万年前までに複数の火口で火砕流を伴う大規模な噴火が繰り返され、約4万年前までの活動により直径3kmの円形のカルデラを生じた。 |
4 | 十和田湖 | 青森県 | 十和田市 | 約20万年前から活動をはじめた十和田火山は、約5万5千年前から1万5千年前の間に、大規模な噴火を繰り返した。少なくとも3回の火砕流噴火によって陥没が進み、約1万5千年前に現在の十和田湖の原型であるほぼ四角形のカルデラが形成された。 |
5 | 宇曽利山湖 | 青森県 | むつ市 | カルデラの形成時期はMIS8(約30万年前)以前と推定される. ー桑原ら(2001)火山第46巻第2号37-52頁 |
6 | 田代平 | 青森県 | 青森市 | 約200万年前の八甲田の火山活動によって生まれたカルデラ湖の跡 |
7 | 鬼首カルデラ | 宮城県 | 大崎市 | 生成した時期には諸説ありますが,約20万年前(更新世後期)まで,というのが最も有力 |
8 | 森吉火山山頂カルデラ | 秋田県 | 北秋田市 | 森吉火山は第四紀更新世中頃に活動を開始した東北日本那須帯に属する火山である。山頂部に径約3kmの陥没カルデラを持ち,その形成を境に活動様式・構成岩石の岩石学的性質が著しく異なる。ー中川(1983)岩石鉱物鉱床学会誌78, 197-210, |
9 | 秋田駒ヶ岳 | 秋田県 | 仙北市 | 約11000~13000年前に、山頂付近から噴火が発生し、南北2つのカルデラが形成された。 |
10 | 向町盆地 | 山形県 | 最上郡最上町 | 主要な形成史は今話題のチバニアンの時代(77.4~12.9万年前)が舞台。-柴崎(2020)砂防学会研究発表会概要集 |
11 | 肘折カルデラ | 山形県 | 最上郡大蔵村 | 宇井・他(1973)、 Miyagi(2004)による肘折の活動年代分析値から、おおよそ1万年程度前に活動があったと考えられる。 |
12 | 雄国 | 福島県 | 耶麻郡北塩原村 | 約50万年前の猫魔ヶ岳の火山活動によって誕生した。 |
13 | 沼沢 | 福島県 | 大沼郡金山町 | 沼沢の形成は約11万年前のプリニー式噴火に始まり、数万年間隔でプリニー式噴火とデイサイト溶岩ドームの形成を繰り返している。約5400年前に「沼沢湖火砕流」を噴出すると共に,カルデラ湖(沼沢湖)が形成した。 |
14 | 赤城山 大沼 | 群馬県 | 前橋市 | 約7~5 万年前の間のいずれかにデイサイト火砕流の流出と湯ノ口軽石の噴出によって山頂カルデラ(南北4km×東西3km)を形成した。 |
名称のリンク先は国土地理院の火山による地形サイト
関東・中部のカルデラ
下図のオレンジ色のポリゴンは火山が原因の地形を示し、水色の円はカルデラを示す。カルデラの詳細は下表にまとめた。
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ID | 名称 | 都道府県 | 所在地 | 備考 |
15 | 三原山 | 東京都 | 大島町(大島) | 5〜7世紀の噴火で山頂部が陥没し、直径3〜4.5㎞のカルデラ地形となった。標高764mの三原山は1777〜1779年の安永の大噴火の際、カルデラの中に生まれた。 |
16 | 箱根古期カルデラ | 神奈川県 | 足柄下郡箱根町 | 約25万~18万年前に山体中央部直径八キロメートルの部分が陥没し、カルデラが生じた。 |
17 | 箱根新期カルデラ | 神奈川県 | 足柄下郡箱根町 | 約6.6万年前から4.5万年前にかけて、大噴火によって新期カルデラが誕生。 |
18 | 湯河原カルデラ | 神奈川県 | 足柄下郡湯河原町 | 約23万~13万年前に形成。カルデラの北尾根は箱根古期外輪山に接している。 |
19 | 妙高カルデラ | 新潟県 | 妙高市 | 約2万年前から現在の山頂に見られるカルデラの形成が始まった。 |
20 | 立山カルデラ | 富山県 | 富山市,中新川郡立山町 | 立山カルデラは大規模な火山活動に起因した陥没地形ではなく、火山堆積物の脆弱な山体が浸食によって失われた侵食地形であると考えられている。ー立山カルデラ砂防博物館2013「イベントニュース10月号」 |
21 | 黒姫山のカルデラ | 長野県 | 上水内郡信濃町 | 約5万5千~4万3千年前に形成された。 |
22 | 大峠コールドロン | 愛知県 | 北設楽郡東栄町・設楽町・豊根村 | 火山性陥没構造をコールドロンという。約15Ma~13Maの年代測定結果を得ている。-下司2003 地質学雑誌 第109巻 第10号 P580-594. |
名称のリンク先は国土地理院の火山による地形サイト
中国・九州のカルデラ
下図のオレンジ色のポリゴンは火山が原因の地形を示し、水色の円はカルデラを示す。カルデラの詳細は下表にまとめた。
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ID | 名称 | 都道府県 | 所在地 | 備考 |
23 | 三瓶山 | 島根県 | 大田市,飯石郡飯南町 | 約10万年前、約7万年前、約4万年前の活動期には、多量の軽石をともなう噴火によりカルデラが形成。 |
24 | 妙見カルデラ | 長崎県 | 雲仙市 | 約2万年前の妙見岳山頂部の. 爆発による崩壊で形成。 |
25 | 野岳カルデラ | 長崎県 | 雲仙市,南島原市 | 約7万年~15万年前に形成。 |
26 | 阿蘇 | 熊本県 | 阿蘇市,阿蘇郡高森町・南阿蘇村 | 約 27 万年前から約 9 万年前までに繰り返 されたカルデラ噴火によって南北約 25 km,東西約 18 km の巨大なカルデラが形成され(Matumoto, 1943; 渡辺, 2001) |
27 | 加久藤 | 宮崎県 | えびの市 | 32万年前に形成。 |
28 | 姶良 | 鹿児島県 | 鹿児島市,垂水市,霧島市,姶良市 | カルデラ形成は約2万5000年前。 |
29 | 池田カルデラ | 鹿児島県 | 指宿市 | 約6,500年前以降。最新の噴火:4,900年前(鍋島岳) |
30 | 鬼界カルデラ | 鹿児島県 | 大隅海峡 | カルデラ形成は9万5000年前と7300年前。 |
名称のリンク先は国土地理院の火山による地形サイト
おわりに
318dcdc23acb0719310a6c2337947d48日本列島は火山国であり、各地に大小様々なカルデラが存在している(上図の水色の円がカルデラ)。それぞれのカルデラは、異なる噴火の歴史を持ち、独特の景観や生態系を作り上げてきた。
本記事では、日本列島各地域に分布するカルデラを概観した。
壮大なスケールのカルデラ湖、温泉、豊かな自然、そして歴史文化… 日本のカルデラは、私たちに地球の力強さを教えている。
カルデラは、過去と現在、そして未来を繋ぐ貴重な存在である。私たちは地球の宝物を大切に守り、未来世代へと受け継いでいく責任がある。日本のカルデラを巡る旅を通して、地球史への理解を深め、自然との共生について考えてみよう。
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