牛頭天王 -神でも仏でもない「カミ」-

皆さんは牛頭天王(ごずてんのう)をご存知だろうか。googleで検索してみると冒頭に以下のような記載があった。

”牛頭天王はインドの祇園精舎の守護神であり、素戔嗚の本地仏とある。また、除疫神として京都八坂神社や愛知津島神社に祀られている。”

これを読んで私は、牛頭天王は「神仏習合の代表格」のような印象を抱いたが、調べれば調べるほど、そう簡単な話ではないことが分かってきた。

本記事では、牛頭天王に関する諸説を眺めながら、その存在の奥深さを見ていきたいと思う。

目次

牛頭天王信仰のはじまり

牛頭天王という文言が初めて確認できるのは、「本朝世紀」(久安四年 1148年)とされる。

京都の祇園社(現在の八坂神社)から全国に広がったというのが有力な説である。
神仏分離により、現在は素戔嗚を祭神として祀ったとされ、牛頭天王の文言は残っていない。

また、鎌倉初期成立とみられる古辞書 十巻本「伊呂波字類抄」では、牛頭天王について異国神として書かれている。
天竺から北方の国(九相の吉祥)において、城の王が牛頭天王といわれており、日本が出自でないことをあらわしている。
天竺や吉祥といった言葉は仏教に関連している。これは当時の祇園社が神社であるものの、比叡山延暦寺に下にあり、お寺としての側面があったため、仏教的な記載があったものとみられている。

もう一方の説としては、兵庫県の広峯社が牛頭天王信仰の根拠地であって、その後に中国地方を経由して京都 八坂の地に祀られるに至ったという説である。ちなみに、この説に対して祇園社(現在の八坂神社)は反論しているようだ。

その他には、愛知の津島天王社(現在の津島神社)にも祭神として祀られるようになった。

祇園社と津島天王社などは全国各地に勧請されており、牛頭天王信仰は広がりをみせた。

牛頭天王の性質(ご利益)

牛頭天王の性質を考える際にわかりやすい例として、祇園御霊会というものがある。
これは、祇園社の神を鎮めることにより疫病の流行を抑えることを目的としている。

したがって、祇園社に祀られる牛頭天王の性質は、疫病を広める荒神として認識があるということになる。
牛頭天王をお祀りし、信仰することによって、逆に疫病を抑え、除疫・免疫になると伝えられてきたのである。

牛頭天王の廃絶の動き -神仏分離-

近世中期の国学者である天野信景によれば、牛頭天王の名称は華厳経をはじめとした幾つかの経典にある「牛頭栴檀」の名称が由来とされる。
また、室町期成立と思われる祇園社略記において、祇園社祭神について、仏家は牛頭天王、神家は素戔嗚、暦家(陰陽道)は天道神と称しした記録が残っている。

これら近世の国学者の研究により、牛頭天王は仏教系の信仰であると認定された。
このことから明治元年(1867年3月28日) 神祇官事務局布達にて、”中古以来、某権現或は牛頭天王之類、其外仏語を以て神号に相称候神社不少候。何れも其神社之由緒、委細に書付、早々可申出事。(以下略)”と通達が下った。
つまり、牛頭天王は神仏分離の対象であり、某権現あるいは牛頭天王の類とあるように、名指しで特定されている。

神仏分離により、例えば京都の祇園社では、祭神を牛頭天王から素戔嗚に改め、さらに神社の名称を八坂神社に変わった。
というのが、一般的な通説である。ただ一方で、以下のような説もある。

斎藤英喜は、卜部兼文・兼方がスサノヲと祇園社祭神とを結びつけた後も、吉田兼倶が登場するまで祇園社祭神の呼称は流動的であった、と指摘している。

鈴木 耕太郎 「牛頭天王縁起」に関する基礎的研究 立命館大学 2013年3月 紀要論文 630号 236~244頁

牛頭天王は本当に仏か?

近世国学者たちによって、仏の類とされた牛頭天王であるが、そう簡単に結論付けることは難しい。

例えば「渓嵐拾葉集」において、陰陽道の鬼神として牛頭天王が仏(如来)と対比として表現されている。
また、「三国相伝簠簋内傳金烏玉兎集」において、陰陽道の神(暦神)である天道神が、 牛頭天王と同体視されていることが挙げられる。

また、鈴木耕太郎先生によれば、「牛頭天王縁起」(文明本)を読解すると、牛頭天王の性質は防疫・免疫という側面以外に、寿命長遠・福寿増長といった現世利益的なものまであるようである。

これは私見であるが、牛頭天王とはこういう存在だと一概に定義することはできないのかもしれない。
その理由は、その他のカミにも共通するだろうが、地域(信仰の場)や時代背景により、それぞれ異なる姿として人々に捉えられていたと思えるからである。

地域によって伝えられる伝承は、その地域に人間にとっての正解であり、正解は沢山あるのだろう。
そういった奥深さを牛頭天王には感じざるを得ない。

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