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遺跡発掘×ゲノム解析で明らかになる、弥生人の正体

目次

1.はじめに:土器とゲノムがつなぐ過去と現在

下記の記事を書いたきっかけは、2018年~2022年度の文部科学省新学術領域研究(研究提案型)「ゲノム配列を核としたヤポネシア人の起源と成立の解明」(略称:ヤポネシアゲノム)でした。さらに、開催期間2025年3月15日(土)~6月15日(日)にかけて、国立科学博物館で開催されている特別展「古代DNA展-日本人のきた道ー」では、最新の研究結果が網羅的に展示されています。本記事では、特別展や過去の記事を通じてわかった弥生人の正体について、よりわかりやすく具体的に紹介します。

2.発掘から見えてくる弥生人

清須市朝日遺跡

研究プロジェクトの一環として、清須市朝日遺跡から出土した2体の人骨に対し、炭素14年代測定とDNA分析が行われました。朝日遺跡は、地域でもっとも古い水田稲作民の遺跡とされる貝殻山貝塚の南側に位置していたため、従来は弥生時代前期のものと考えられてきました。しかし、分析の結果、実際には弥生中期中葉以降、あるいは古墳時代の可能性もあることが明らかになりました。
核ゲノムの分析では、縄文由来の核ゲノムの痕跡はほとんど認められず、西日本の渡来系弥生人の中でも現代中国北部系(華北)に最も近いことが判明しました。これは、考古学的に土器の形状や文様から分類される「遠賀川系土器の斉一性」とも一致しており、九州北部から伊勢湾沿岸地域までの広範囲にわたって混血の少ない集団が広がっていたことを示唆しています。

炭素14年代測定については、この記事も読むとより理解できます。

3.土器の系統とDNAが示す「異なる生業」

稲作民と狩猟採集民の違い

前述のとおり、伊勢湾沿岸地域である朝日遺跡の水田稲作民の核ゲノムが渡来系弥生人そのものであることがわかりました。朝日遺跡より少し時代はさかのぼりますが、弥生早期後半の渥美半島に暮らし、条痕文系土器をつくっていた狩猟採集民の核ゲノムについて検証した結果も紹介します。それは愛知県伊川津貝塚2号人骨の核ゲノムですが、縄文人そのものであったことがわかりました。つまり、すくなくともこの地域では、発掘調査と最新のDNA分析が組み合わさることで、従来の土器分類と遺伝的背景が一致することが明らかになり、弥生時代の人びとの移動や集団構成をより具体的に描き出すことができます。

4.地域ごとの違いと人の移動

土器の地域差と遺伝的多様性から見える弥生時代社会

弥生時代の島根半野や伊勢湾沿岸地域では、土器の系統や型式に地域ごとの違いが見られます。たとえば伊勢湾沿岸地域では、弥生時代後期に「山中式」と呼ばれる独自の土器型式が成立し、濃尾平野を中心に周辺地域へ影響を与えながら、一つの様式圏を形成していました。こうした土器の地域的特徴は、畿内や九州など他地域からの影響や、外部との交流によって生まれたものであり、弥生時代の社会が単一ではなく、多様な文化が交錯していたことを示しています。

一方で、最新のDNA分析からは、同じ地域内でも集落ごとに遺伝的な多様性が高かったことが明らかになっています。たとえば島根県の青谷上寺地遺跡では、40体近い人骨のDNA分析の結果、8割以上が異なるタイプで構成されており、血縁関係のない個体が多く含まれていました。これは、外部からの人の流入や交流が頻繁にあったこと、つまり集落が「開かれた社会」であったことを示唆しています。

このように、土器の型式や分布と、集落内の遺伝的多様性の両面から見ることで、弥生時代の社会は単なる農耕民や狩猟採集民の集まりではなく、さまざまな系譜や文化が重層的に入り混じる、動的で多様な社会構造を持っていたことが浮かび上がります。土器の地域差は、単なる技術や文化の違いだけでなく、実際に人の移動や交流によって生じた遺伝的背景の違いとも密接に結びついていたのです。

このような視点から弥生時代を見直すことで、従来の「単一民族」的なイメージではなく、より複雑で多様性に富んだ社会像が立体的に描き出されます。

5.まとめ:考古学とDNA分析が描き出す弥生社会の多様性

本記事では、核ゲノム分析と土器の研究を組み合わせることで、弥生時代の人びとや社会の多様性がより明らかになる様子を最新研究から紹介しました。水田稲作民と狩猟採集民は、土器の系統やDNAからも違いが見えてきます。人の移動や交流が活発だったことも分かり、弥生時代は単一ではなく多様な社会だったことが示されています。今後もDNA分析は、歴史解明の大きな手がかりとなるでしょう

参考文献


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