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古代DNA解析がもたらす人類史の新たな知見

目次

はじめに

古代史には、未だ解き明かせていない謎が多く残されています。しかし、古代DNA解析の進展により、これまでの祖先探求にはなかった新たな可能性が開けてきました。この記事では、古代DNA解析による研究成果が、古代史の謎を解明する可能性について紹介します。

まず、古代DNA解析が持つ可能性として、古代の人々の移動や交流を明らかにすることが挙げられます。また、古代DNA解析によって、新しい種の発見や既知種の進化の過程が解明される可能性もあります。たとえば、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが交雑していたことが古代DNA解析によって明らかになりました。一方で、古代DNA解析には課題もあります。例えば、DNAの保存状態や、遺伝子情報の断片化によって、解析に限界があることがあります。また、解析に必要な古代人骨や化石の発見も難しく、その採取には倫理的な問題も伴います。

しかし、これまでの古代史の研究方法にはなかった新たな可能性を古代DNA解析がもたらしていることは明らかです。今後、より高度な技術の発展により、より詳細な解析が可能になることが期待されます。古代史の謎を解き明かすために、古代DNA解析の研究成果に注目が集まることは必至です。

本記事の参考文献は国立科学博物館館長の篠田先生が執筆なさった新書です。

初期の人類の祖先について

ヒトの学名は「Homo sapiens」です。ここで、「Homo」は属名であり、「sapiens」は種名です。学名とは生物につけられる世界共通の名称であり、18世紀の生物学者カール・フォン・リンネ(1707-1778)が提唱した、属と種小名の2つをラテン語で列記し、さらに、これに命名者の名前を記載する二名法(binomial nomenclature)です。最初の名前は属名(genus)、2番目の名前は種名(species)と呼ばれます。ホモ・サピエンスの学名は、人類学や生物学などの分野で広く使われています。また、同じ属に属する他の種も同様に「ホモ」という名前が付けられています。例えば、ヒトの祖先である「ホモ・ハビリス(器用な人)」や、「ホモ・エレクトス(直立人)」などがあります。

二名法は、生物の分類において一般的に使用され、広く受け入れられています。リンネによって考案されたこの方法は、分類学における重要な進歩であり、現代の生物分類学の基礎となっています。それによって、世界中の生物について、同じ名前を使うことができ、研究者たちは共通の言語で生物を議論することができるようになりました。現在、ホモ属のうち生存しているのはサピエンス種だけです。世界中のすべての人間はホモ・サピエンスという生物学的なグループが同じです。

現代人とその祖先を含む人類の直接の祖先である、人科(ヒト科)に属する哺乳類をホミニンと呼びます。ホミニンは、現代人に至るまでの進化の過程で多くの種が出現し、その中にはサヘラントロプス・チャデンシス、オロリン・トゥゲネンシスやアルディピテクス属のふたつの種など、初期の人類の祖先とされる種が含まれています。

サヘラントロプス・チャデンシスSahelanthropus tchadensis)は、2001年に北アフリカのチャド共和国で発見された化石で、約600万年前のものとされています。この種は、顎や歯、骨盤などの特徴から、直立二足歩行に適応した種であったと考えられています。また、脳の容量は現代のチンパンジーと同程度であり、人類が進化する前の段階にあたるとされています。

オロリン・トゥゲネンシスOrrorin tugenensis)は、2000年にケニアで発見された化石で、約600万年前のものとされています。この種も、顎や歯、骨盤などの特徴から、直立二足歩行に適応した種であったと考えられています。また、歯の形状から、草本食を主にしていたとされています。

アルディピテクス属(新生代中新世末期から鮮新世初期)には、アルディピテクス・カダッバ、アルディピテクス・ラミダスなどの種が含まれます。アルディピテクス・カダッバは、エチオピアのアワッシュ川中流域で発見された化石で、約580万-約520万年前のものとされています。アルディピテクス・ラミダスは、エチオピアのアファール盆地で発見された化石で、約440万年前のものとされています。

現時点では、サヘラントロプス属、オロリン属、アルディピテクス属という三つの属の関係はほとんどわかっておらず、相互の関係には議論がありますが、これら三属を総称して「初期猿人」と呼んでいます。

篠田謙一2022 「人類の起源」中公新書P13

アルディピテクス属につづくアウストラロピテクス属は、約420万年前から200万年前にかけて、東アフリカに生息していたヒト科の絶滅した属で、小型の脳と大顎を持ち、直立二足歩行が可能であったことが特徴です。この属には、アウストラロピテクス・アナメンシス、アウストラロピテクス・アファレンシス、アウストラロピテクス・アフリカヌス、アウストラロピテクス・ガルヒ、アウストラロピテクス・セディバなどが含まれます。ケニア北部では330万年前の剥片石器が発見されています。そこから、300万~200万年前に生きたアウストラロピテクス属のいずれかの種がホモ属へ移行したのではないか、という説がありますが、現状では解明されていません。また、約195万年前のアウストラロピテクス・セディバは直立二足歩行に適応しつつ、同時に知能の進化を遂げていた可能性が指摘されています。脳の形状の変化から、ホモ属への移行期にあたるとも考えられています。ただし、アウストラロピテクス・セディバは、ホモ属との間に直接的なつながりがあるわけではなく、ホモ属への移行過程において別の系統から分岐した化石種であるとする見解もあるため、完全な移行種とはみなされていません。

パラントロプス属(鮮新世末)は、約260万年前から約130万年前の間に生息していたホミニンの一属です。アウストラロピテクス属と同じく、猿人と現人類の中間的な特徴を持ちます。顕著な顔の前方突出や大きな顎、歯の強さなどが特徴で、また大型化しており、平均的な体格は現代のゴリラに匹敵します。パラントロプス属には、P.ロブストス(南アフリカ)、P.ボイセイ(東アフリカ)、P.エチオピクス(東アフリカ)など複数の種が存在しました。

さて、いよいよ私たちホモ属が現れます。ホモ属の分類は人類学者により様々な意見が存在しますが、下記のような種が確認されています。ホモ・ハビリス、ホモ・ルドルフエンシス、ホモ・エルガスター、ホモ・エレクトス、ホモ・アンテセッサー、ホモ・ハイデルベルゲンシス、ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)、ホモ・フローレシエンシス、ホモ・サピエンス(現生人類)です。

初期ホモ属は、人類の進化の重要な節目のひとつであり、より大きな脳容量を持ち、より高度な石器技術を使用するようになったことで、より多様な環境に適応することができるようになったとされています。約240万年前から150万年前にかけて東アフリカで出現した初期ホモ属(ホモ・ハビリスやホモ・ルドルフエンシス)がのちのホモ属につながると考えられています。

ホモ・エレクトスは、およそ200万年前にアフリカで誕生し、初めてアフリカ大陸から外へと拡散し、ユーラシア大陸やインドネシアのジャワ島にまで分布していたとされています。いわゆる原人と呼ばれています。ホモ・エレクトスは、初期の人類の中でも特に重要な存在であり、ホモ・ハビリスから進化したと考えられています。また、アウストラロピテクス属から初期ホモ属への移行期にあたり、両者の特徴を併せ持っていたとされています。

ホモ・ナレディは、2015年に南アフリカで発見された、約30万年前の人類の祖先とされる化石人類です。脳容量が小さいことから、ホモ・エレクトスよりも原始的な人類とされています。また、石器の使用や火の使用も示唆されており、知能が発達していたと考えられています。

ホモ・アンテセソールはスペイン北部のアタプエルカ山地の遺跡で発見されたホモ属の新種です。これらの化石は前期更新世(約250万年~77万年前)にさかのぼります。2020年のNatureに発表されたタンパク質解析に関する研究によると、ホモ・アンテセソールはその後の中期更新世と後期更新世のヒト属(サピエンス含む)に近縁種と考えられる結論が出ていました。しかし、まだ系統関係は明確にされていません。

ホモ・ハイデルベルゲンシス約60万年前にヨーロッパやアジアに生息していた、初期のホモ属に属する人類の一種です。石器を使用するなど高度な文化的行動を示しました。また、現代人の直接の祖先ではないものの、現代人に近い形態を示すことから、人類進化の重要な段階の一つとされています。

ホモ・ネアンデルターレンシスは、従来の説では約30万年前から約4万年前までヨーロッパ、アジア、中東に広く分布していた旧人類の一種とされています。また、道具の製作技術に優れ、火の使用も行っていたことが知られています。しかし、約4万年前に絶滅したとされ、現在の人類はネアンデルタール人との混血があったものの、別の進化系統をたどっています。

デニソワ人

化石資料の不足から正式な種名は確立していませんが、ホモ・ネアンデルターレンシスと約43万年より前に系統が分岐した人類の新種です。下記は今回とても参考にさせていただいたブログです。興味が尽きない方は是非。

アフリカからの初期拡散

ホモ・サピエンスがアフリカで誕生したことは定説となっていますが、世界への拡散のシナリオにはまだ謎が残されています。しかし、数十万年以上も前のホモ・サピエンスとネアンデルタール人の交雑も明らかになってきており、ホモ・サピエンスの出アフリカは科学者たちの仮説よりも早まる可能性がありそうです。

系統分析からは、アフリカ人の共通祖先は二〇万~十五万年前に存在したと考えられています。彼らは世界中のホモ・サピエンスの共通祖先となるのですが、最初に分かれたハプログループ(L0)を高い頻度で持つのは、カラハリ砂漠に住む狩猟採集民のコイ・サン語族の人びとで、そこからコイ・サンがホモ・サピエンスのもっとも古い系統に属する人びとであると考えられてきました。

(略)

コイ・サンのグループと分かれたグループから最初に分岐するのは中央アフリカの狩猟採集民のグループで、これも分岐年代の推定には幅がありますが、三五万~七万年前のどこかであると考えられています。

(略)

そして一四万年~七万年前のあいだに、東アフリカの狩猟採集民が分岐し、のちにこのグループの中から世界展開をする集団が現れることになります。

篠田謙一2022 「人類の起源」中公新書P90-93

ホモ・サピエンスはアフリカで誕生し、その後アフリカを出発し、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカに広がっていきました。途中で文化や遺伝子の変化が起こり、他のヒト種との混血もありました。現代では、ホモ・サピエンスは世界中に分布し、生きています。ホモ・サピエンスの誕生はアフリカのどこなのか、過去のアフリカ全域の分布も含めまだまだ解明の途中にあります。今後の研究を注視したいです。

ヨーロッパ人の起源や移動に関する新たな知見

ホモ・サピエンスが世界展開を成し遂げた六万~五万年前から、農業生産が始まる一万年ほど前までの時代を後期旧石器時代と呼びます。この時代には、ホモ・サピエンスがユーラシア大陸に拡散するだけではなく、かつてそこに住んでいた私たち以外の人類が消滅しました。

後期旧石器時代は最後の氷期に当たっており、非常に乾燥していて、一般に寒冷なイメージですが、実際には短い周期で気候が激しく変動していたことが最近の研究でわかっています。

篠田謙一2022 「人類の起源」中公新書P116

ヨーロッパ人の祖先の起源と移動の解明

最近の古代DNA解析によって、ヨーロッパ人の起源や移動に関する新たな知見が明らかになってきました。おおまかに流れを紹介します。

  1. ムスティエ文化:フランス南西部のル・ムスティエ遺跡で発見された、ネアンデルタール人による約30万年前から4万年前にかけての文化。材料の石を打ち割ってできた破片を更にたたいて三角形に仕上げながら刃を付けるように作る石器が特徴です。
  2. プロトオーリニャック文化:フランス中南部のオーリニャック遺跡の前段階にあたる文化。約45,000年前から40,000年前にかけてのものです。細石刃と簡素な装飾品で知られている文化で、ホモ・サピエンスによる文化です。
  3. シャテルペロン文化:フランス南西部のシャテルペロン遺跡で発見された、約3万7000年前から2万5000年前にかけての文化。ネアンデルタール人による新たな文化です。
  4. オーリニャック文化:プロトオーリニャック文化に続く、ホモ・サピエンスの後期旧石器時代文化をオーリニャック文化と呼びます。フランス中南部のオーリニャック遺跡で発見された、約4万年前から2万8000年前にかけての文化。多様な石器の制作技術が発達し、洞窟絵画や彫刻など芸術的な表現が見られる。
  5. グラベット文化:フランス南西部のグラベット遺跡で発見された、約2万8000年前から2万年前にかけての文化。最終氷期の最寒冷期にあたる時期。細かな石器の制作技術が発達し、住居跡などの発掘もされている。オーリニャック文化に比較するとこの文化は死者を入念に埋葬するため、人骨試料が多く残されている。
  6. ソリュートレ文化:フランス南西部のソリュートレ遺跡で発見された、約2万1000年前から約1万6000年前にかけての文化。野菜や果物の栽培が始まり、牧畜も行われるようになる。
  7. マグダレニアン(マドレーヌ)文化:約1万8000年前から約1万1000年前にかけての文化。ヨーロッパ全体で見ればオーリニャック文化の系統が「飛び地」で存続し、マドレーヌ文化を持つ人々として受け継がれたと推測されている。

Cosimo Posthたちの論文では、古代の狩猟採集民(356個体)のゲノムを解析した研究が報告されている。このゲノムデータには、3万5000年前から5000年前までの西ユーラシアと中央ユーラシアの14カ国の116個体のゲノムデータが新たに加わっている。その結果、西ヨーロッパのグラベット文化に関連した個体が有していた祖先系統が同定され、この祖先系統を有する南西ヨーロッパの人類集団が最終氷期極大期を生き延び、マドレーヌ文化の拡大に伴って北東方向に移住したことが判明した。一方、南ヨーロッパでは、エピグラベット文化に関連する祖先系統が、おそらくバルカン半島からイタリア半島に移住してきたため、最終氷期極大期に局地的な人類集団の入れ替えが起こり、その後、エピグラベット文化に関連した個体に近縁な祖先系統が約1万4000年前からヨーロッパ中に広がり、マドレーヌ文化に関連する遺伝子プールとほぼ入れ替わったことが明らかになった。

この研究は、最終氷期極大期の末期におけるマドレーヌ文化の起源と拡大に関する長年の考古学上の論争を解決するために役立つとともに、考古学的文化の中には、混合に応じて出現したと考えられるものや環境の変化に関連して出現した可能性の高いものがあり、遺伝的入れ替えを伴うものと伴わないものがあったことを示唆している。

Natureハイライト Cosimo Posth et al. (2023)
Palaeogenomics of Upper Palaeolithic to Neolithic European hunter-gatherers

ヨーロッパでの考古学的な論争のひとつが上記の論文で解決した、というニュースを知ると、ゲノム解析やタンパク質解析など最新技術による研究の発展がとても楽しみです。

ヨーロッパでは、旧石器時代の始まりと終わりごろ、すなわち四万年前と一万四〇〇〇年前ごろに中東から狩猟採集民が進出し、独自の遺伝的な構成を持つ集団として成立したことが、古代ゲノムの解析によって明らかになっています。その後、新石器時代になってヨーロッパでは農耕が始まり、第三の移住の波が訪れます。

解析の結果、農耕の受け入れに際して地域集団の完全な置き換えは起きなかったものの、八五〇〇年前のヨーロッパ南西部では、中石器時代の採集狩猟民の子孫が、北西アナトリアからやってきた農耕民によって周辺におしやられたことがわかっています。

篠田謙一2022 「人類の起源」中公新書P136

人類の移動を地球規模で眺めていると、周囲に追いやられたもしくは冒険心から拡散していった人類が、遥か遠い地へ拡散していったことを想像してしまいます。5000年前にはハンガリーからアルタイ山脈のあいだに広がる地域にヤムナヤ文化(ヤムナ文化)という黒海付近で発展した文化がありました。その中心はウクライナにあり、馬や車輪を使ってまたたくまに広がりました。ドイツでは遺伝子の3/4がヤムナヤ由来と置き換わった形跡があるそうです。彼らがもたらした文化には網目文土器があります。詳細は下記の記事がとてもわかりやすく書かれていました。ご興味のある方はぜひ下のリンク先へいってみてください。

いよいよ、日本周辺にも目を向けてみましょう。

古代日本人DNA解析によってわかったこと

日本列島の人々の起源や移動に関する新たな知見

日本列島に初めてホモ・サピエンスがやってきたのは、今から4万年前と言われています。日本では、約1万6千年前に日本列島で土器が作られ始め、弥生人が九州北部にやってきた約300年前までを「縄文時代」としています。この時代に日本列島に住んでいた人間を縄文人と呼びます。縄文人のゲノムを共有している現代人は、最も多いのがアイヌの人たち、そして沖縄の人たち、次いで本州、四国、九州です。そのほか、極東ロシアの先住民や韓国人、台湾の先住民など東アジアの沿岸地域の集団もわずかながら、縄文人のゲノムを共有することがわかってきています。さらに六〇〇〇年前よりも新しい時代の東アジア各地のゲノムを解析すると、縄文人とアムール川流域の狩猟採集民、新石器時代および鉄器時代の台湾人、チベット高原の集団が、同じ系統に属することがわかっています。

縄文人の持つミトコンドリアDNAの代表的なハプログループはM7aとN9bです。このふたつのハプログループは、現代ではほぼ日本列島内に限って存在していること、それぞれの成立年代が三万~二万年前にさかのぼることから、おそらく縄文時代よりも前の旧石器時代に日本列島に流入し、大陸に残った系統は消滅してしまったと考えられています。
双方のハプログループの分布を見ると、N9bの系統が東日本から北海道にかけての地域で多数を占めるのに対し、M7aの系統は西日本から琉球列島で多数になるという、東西の地域差が認められています。
次世代シークエンサが実用化し、縄文人のミトコンドリアDNAの全塩基配列データが利用できるようになると、詳しい地理的な分布の違いも明らかになりました。同じM7aの系統も西日本に分布するもののほうが成立年代が古く、東に行くほど新しくなることもわかったのです。そこから、この系統は中国大陸の南部沿岸地域から西日本に進入して東へ向かったと推測されています。

篠田謙一2022 「人類の起源」中公新書P203

Y染色体DNAに関しては、縄文人の解析例はあまりありませんが、これまで分析された縄文人男性は、現代日本人では三割程度を占めるものの朝鮮半島や中国にはほとんどいない、ハプログループD系統を持っていることが明らかになっています。現代人では日本列島にほぼ限定して残っているハプログループは、ミトコンドリアDNAでもY染色体のDNAでも、縄文人から引き継いだものだということになります。

古代ゲノム解析は、縄文人に関する従来説を検証し、列島内部の均一な集団という姿を覆しつつあります。より詳細な縄文人の実像を明らかにすることで、その研究成果は、今後は考古学や歴史学、言語学などの分野にも大きな影響を与えていくことになるでしょう。

篠田謙一2022 「人類の起源」中公新書P210

縄文時代の古代ゲノム解析も今後の研究が楽しみです。

弥生時代における日本列島の人々の遺伝的多様性の増加

「弥生時代になり、金属や稲作が各地で広まった」と学校で習ったかもしれません。しかし、研究により多くのことがわかってきています。

弥生時代を特徴づけるものとして、水田稲作農耕と金属器の使用があります。縄文時代には農耕があったものの、金属器は存在しなかったため、客観的には金属器の使用が弥生時代の特徴と言えるかもしれません。農耕と金属器は必ずしも密接に結びついたものではなく、それぞれ異なる集団に起源を持つ可能性があるため、弥生時代に渡来した集団の由来を考える際に重要です。

最近の研究結果を紹介しています。
「ChatGPTを使って気になる英論を読む」の記事では下記のようなトピックの英論を紹介しました。

1⃣JAS(the Jomon allele score)の地域差は縄文時代の人口規模の地域差:縄文時代後期から弥生時代にかけて、地域の人口規模が小さいほど、現代の本土日本人のJASが低かった(つまり、東アジア大陸からの移民のゲノム構成要素の寄与が高い)。

2⃣各地域の稲作の推定到達時期との相関:先行研究では稲作が北部九州に到来した後、南部九州よりも早く近畿・四国地方に到達したとされている。近畿・四国地方でJASが低いことと一致する。また、JASと各地域の稲作の推定到達時期との関係から、JASが低いほど稲作の到達時期が早いことが示唆された。

まとめ:古代DNA解析がもたらす新たな可能性と未知の世界

確かに、古代DNA解析は人類史や古代史における多くの謎を解明する可能性を秘めています。例えば、遺伝的多様性の解析によって、人類の起源や移動の歴史について新たな仮説が立てられるようになると考えられます。また、具体的な人種や民族の起源や拡散の過程を解明することもできます。

しかし、古代DNA解析にはいくつかの課題や限界があります。例えば、DNAの劣化や汚染によって解析が困難になることがあります。また、古代人のDNAは現代人のDNAと比べて非常に少量しか含まれていないことがあり、十分な情報を得ることができないこともあります。さらに、標本の取得が困難であることも課題の一つです。例えば、人類の起源がアフリカにあるとする説を検証するためには、アフリカでの発掘や標本の取得が必要になりますが、政治的な問題や地理的な条件などがハードルとなっている場合があります。

また、古代DNA解析が得られる情報はあくまで遺伝的情報であり、人間の行動や文化などについては直接的には知ることができません。例えば、ある文化が広がった原因や背景については、古代DNA解析だけでは十分な情報を得ることができません。

以上のように、古代DNA解析には課題や限界がありますが、新たな発見や知見が得られる可能性があります。今後も古代DNA解析が進歩し、未知の世界を見つけ出すことができることが期待されます。

参考文献

ヒトにもっとも近縁な動物はチンパンジーである。霊長類の進化の過程で、共通の祖先からヒトの系列とチンパンジーの系列とに分岐してきたが、いま、ミトコンドリアDNAの塩基配列をヒトとチンパンジーで比較すると、約九%ほど異なっていることが知られている。ところが、ミトコンドリアでなく核のDNAにおいて、二種間の同じ遺伝子配列を調べると、わずか一%しか相違がない。共通の祖先から分岐した後の時間はミトコンドリアも核も同じであるから、その間に蓄積された塩基置換数はミトコンドリアDNAのほうが核DNAより九倍多いことになる。核DNAの塩基置換速度は遺伝子によってバラツキがあるので、それを考慮すると、実際にはミトコンドリアDNAでは核DNAの五倍から一〇倍の速さで塩基置換が起こっている

  この塩基置換速度が速いという特徴から、比較的短い進化的時間の中で生じたDNAの変異を効率よく測ることができるのである。

国立遺伝学研究所 DNA人類進化学 

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